当教会は「日本聖公会東京教区」に属しているキリスト教の教会です。当教会が属している「聖公会」はその源流をたどると、英国に行きつきます。
キリスト教は世界に広がり英国でも独自のキリスト教文化が生まれましたが、16世紀英国の宗教改革によって新たなる姿で生まれ変わりました。英国の宗教改革から生まれた英国教会の海外への宣教は北東アジアまで至り、北東アジアの漢字圏文化の国では、伝統的な信仰告白である使徒信経とニケヤ信経にある「聖なる公同の教会(Holy Catholic Church)」から「聖公会」と名付けられました。他の国々ではAnglican Church(英国系)あるいはEpiscopal Church(スコットランドおよび米国系)と呼ばれています。
聖公会が生まれた英国の時代的状況は、信仰的にも政治的にも混乱の真っただ中でした。当時聖公会はローマ・カトリックとプロテスタントの諸要素を包容し、かつ一方にかたよらない「Via Media」の精神でその独自性を保持してきました。このように生まれた聖公会は「改革したカトリック教会」「教理に寛大な正教会」「カトリック伝統を維持しているプロテスタント」であると言われています。「Via Media」を直訳すると「中庸」という言葉になり、両極端の間でバランスを保つ、というような意味ですが、「中道」という訳もあるため真理を求めて「道」のただ中を歩み続けることをも意味していると言われています。おそらく「Via Media」は真ん中の道を意味しているのではなく、両極端を全て受け入れ包容しながら新たなる道を模索していくことを意味しているでしょう。
英国における宗教改革時代の葛藤と妥協、分裂と一致の経験と試行錯誤の歴史の中で自らの道を歩んだ結果が今の聖公会 の姿です。「わたしだけが真理を知っているので、わたしだけが正しい」「あなたは真理をもっていない。あなたは間違っている」という立場ではありません。 英国の宗教改革の経験を通して「わたしは間違っているかもしれない」「あなたが正しいかもしれない」「しかし真理はわたしの所有物ではない」「絶対的真理 の持ち主である神が示してくださった道を共に歩もう」という人間の不完全さをもっている群れだと聖公会は自らを定義しています。むしろ「不完全さ」を教会 の誇りとしています。この態度から聖公会は世界の不完全な人々を迎え入れ、共に真理の道を歩んでいます。不完全で罪深い人間が集まって互いの信仰と経験と 考えを語り合いながら、わたしたちの歩みを導いてくださるように、神に礼拝を捧げて神の国に向かって共に歩んでいます。全世界の164ヶ国(2015年現在)に広がっている聖公会の共同体は「アングリカン・コミュニオン(the Anglican Communion)と呼ばれています。「交わり(communion)」と教派の名称を決めたキリスト教会は聖公会しかありません。
1859年に宣教が始まった日本聖公会は、全世界の聖公会と共に次に記した聖公会綱憲を大事にして守っていますが、日本聖公会綱憲は1886年にシカゴで開かれた米国聖公会の総会で、「教会一致のための最低条件」として可決され、2年後の1888年に開かれた第3回ランベス会議で承認された「シカゴ-ランベス四綱領」を元にしたものです。その内容は以下の通りです(訳は文語訳です)。
- 旧約及び新約の聖書を受け、之を神の啓示にして救いを得る要道を悉く載せたるものと信ずる。
- ニケヤ信経及び使徒信経に示されたる信仰の道を公認する。
- 主イエス・キリストの命じ給うた教理を説き、其の自ら立て給うた洗礼及び聖餐の二聖奠を行い、且つその訓戒を遵奉する。
- 使徒時代より継紹したる主教(エピスコポ)、司祭(プレスプテロ)、執事(デアコノ)の3職位を確守する。
簡単な言葉でキリスト教、聖公会を語りつくすのは容易ではなく、これらの説明は特に教会が初めての方々には難しいことと思います。
ぜひ教会にお越しいただき、牧師や信徒の方々と交じり合っていただき、その中でいろいろとご経験いただければ幸いに思います。